かつて、師匠は言った。

 

 

 

日本人ってイエスマンって言うじゃない?あれって同調性が高いことを言っているとも思うのよね。

日本人くらいよ、自分が哀しいのとか苦しいのとかに、まずは同調して欲しいって情に訴えるの。

外国人の方が主張は激しいけど、それはそう思っているって訴えているだけだから、理解は求めるけれど、

同情してもらいたいってわけじゃないことが多いの。

表情がわかりずらくて、思っていることをはっきり言わないでも、そこらへんは表情で窺えっていうのが日本人の

コミュニケーション術なのかもしれないわね。良きにつけ悪しきにつけ、日本人独特のものよね。

イギリス人も日本人に負けず劣らずシャイだけど、その辺の他人に求めるものが根本的に違うと思う。

距離を置くのがマナーと解釈することもできるのよ?

そう考えるとあの子は徹底しているって言ってもいいかもしれないわね。

まぁ、あの子は極端過ぎる例だけどねぇ。

ふふ、分かってるわよ、不機嫌な時あの子への対処方法の話でしょう?

だから放っておくことが一番!

一人で置いておいてあげるの。

個人主義者の権化みたいな子ですもの。

一人は寂しいだけじゃないわ。孤独は人を成長させるし、ものを考えるには最適ですもの。

それにあの子無駄に賢いから、そのうち自分ですぐ気が付くわ。

機嫌悪くて当り散らしている時間の方が無駄だって。

だからひとまずは、一人にさせてあげるのよ。

 

 

 

 

 

 

 

プライベートのマナー違反に彼は厳しいから。

 

  

 

  

 

  

 

今週の博士は、確かにかわいそうなくらい理不尽な理由で機嫌が悪かった。

意に沿わない仕事を大量に押し付けられ、しかも自分の論旨をどこぞの名誉教授から徹底的に批判されたのだ。

そのあまりの機嫌の悪さに、彼の監視役ですら同情を禁じえず、口も利かない博士を放置していたほどだ。

だから、私も師匠と監視役のご意見に従った。

 

ご飯食べないとか。

眠らないとか。

構ってくれないとか。

口もきいてくれないとか。

完全無視を決め込んでいるとか。

 

不機嫌な恋人に言いたいことはたくさんあったけど、黙って見守ってあげたのだ。一週間も!

心広いなぁ、私。

 

 

そしたらさ、そうだよ、もう2時間も前だよ。

 

 

ヤツは書斎から出てくるなり、リビングで寛いでいた私の横に寝転がり、有無を言わさず膝枕を強要した。

驚いたけど、文句を言う前に眠り込んじゃったから、私は開いた口をそのまま閉じた。

ヤツは何故か腕組みしたまま、私のお腹に顔を向けて、眉間に皺を刻んだまま眠り込んだ。

≪ 苦 悩 ≫ って名前をつけたくなるような寝顔。

少なくとも、かわいい彼女の膝枕で眠る幸せものの顔じゃぁない。

突然そんな顔して眠り込まれてみ?

一体何を考えているんだって怒鳴りたくもなるよ。

でも、明らかに睡眠不足の人間が寝ている横じゃぁ、それもできないじゃない。

 

 

 

 

 

で、結局そのままの体勢で2時間経過。

 

 

 

  

 

いい加減足も痺れてきたし、手持ちの雑誌も読み終わっちゃったし、窓の外には夕暮れが近づいていている。

ベランダの洗濯物もしまいたいし、夕飯の準備だってしたいんだけど・・・・・

 

  

 

 

 

 

珍しく自分から懐いてきた不機嫌な博士は、

 

・・・・

 

・・・・その、なんだ。 

 

なんだかびっくりするくらい可愛らしくてさ。

   

あと、1時間は我慢してあげてもいいかな?なんて思ってしまっているんだよね。

  

 

 

 

 

  
  
 不機嫌な君は、夢現に何を求めたの?

 

 

言い訳・あとがき

33,332番 しぐれ様からのキリリク 『機嫌の悪いナルを(麻衣が)正しく直す方法』 です。

上機嫌なナルってことがまず思いつかなくて、ナルが機嫌を直すには・・・って考えたらパンクしました。
すごいですね。博士。あなたの機嫌が直るツールは論文とデータしか思いつきませんでしたよ。
で、個人的にやって欲しかったことで・・・多分ね。コレで機嫌直るんじゃないかなぁというお話にしてみました。
多分なんで、本当に機嫌が直るか自信はないのですが・・・(爆)
しぐれ様、よろしければお納め下さい!リクエストありがとうございました。

 

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