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ご注意下さい! : 長編 『 闇色の世界 』を読了された方を対象としております |
死んだ双子の兄と、生き残った双子の自分は、
多分
他人がいうほど似てはいなくて、自分たちが思うほど異なってもいないのだろう
死んだ双子の兄は、死後まぬけにも成仏し損ねて、浮遊霊となって僕のそばにいた そして、そんなこととは知らずに、死後兄の亡骸を探していた僕と同時に 一人の少女と出会い 僕は同情心から彼女を側におき 兄は僕の手助けにと彼女の指導霊を気取って側にいて まぬけにも 同じ少女に 僕たち双子は恋をした
うんざりするほどのシンクロニティ こんなことを嬉しがる人間がいるなんて信じられない こんなことは双子神秘でもなんでもない ただの、不快な価値観の同一化現象だ
僕らは互いが互いになりたがり 同じ結論に苦しんだ 別人格が二人もいるのに、効率が悪いにもほどがある しかもそれは過剰すぎるほどのコンプレックスを生んだ 死んだ兄は僕より早くそれに気がついて 死後の自分の世界に僕を引きずり込み この僕を諭そうとした この僕たちが その愚かなコンプレックスから 欲しいものを失わないように
馬鹿な話だ アレは死んだと言うのに 自分たちの共有財産を守ろうとしていたのだ 自分たちは別人であると誰よりもわかっているはずなのに アレは 『 僕達の 』 と、当然のように物事の基準を二人でわけていた
狂った話だ アレは死んだと言うのに あの時、僕もそれがおかしいとは思わなかった 見つけたものを譲れるのはお互いだけと思い込んでいた それ以外の存在など端から頭になく、疑問にすら思わなかった
霊体など、感情の残滓だ これは記録にも残らない、単なる思い込みである可能性もあるというのに おそらくアレはまるで馬鹿な子どものように盲目的に信じていたのだろう 自分たちだけは特別だと
そうして
僕の存在を忌々しく思いながら アレはどこかで愉悦を感じていただろう 同じ事を思う、『 かたわれ 』の存在に
それから
「――久しぶり」
あの時のように 死してなお 会えて
嬉しいと
忌まわしいほどのシンクロニティ それを信じるのならば 確かにそう感じたことだろう
僕たちは愚かしさまでそっくりなのかもしれないな
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言い訳・あとがき 7777hits kou様からのキリリク 「『闇色の世界』後のナルのモノローグ」 です。 「闇色の世界」はあこが思い入れたっぷりに書いた初の長編でしたので、まさかキリリクでこんなに嬉しいリクエストがいただけるとは、正直予想だにしておりませんでした。 2006年6月28日
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